アカウミガメの卵(たまご)、食害(しょくがい)減(へ)る みなべ町千里の浜(はま) http://i.yimg.jp/images/kids/clear.gif

 

             紀伊(きい)民報(みんぽう)

       --五月十七日(火)十七時二分配信(はいしん)

 

 アカウミガメの産卵地(さんらんち)として知られる和歌山県(わかやまけん)みなべ町山内の千里の浜(はま)で、大手企業(きぎょう)が昨年度(さくねんど)、タヌキやアライグマの食害(しょくがい)から卵(たまご)を守(まも)ろうと防護柵(ぼうごさく)などを設置(せっち)したところ、食害(しょくがい)に遭(あ)った割合(わりあい)が二〇〇九年度(ねんど)の三割強(わりきょう)から、昨年度(さくねんど)には1割弱(わりじゃく)と大きく低下(ていか)したことが分かった。十六日、同社の担当者(たんとうしゃ)が同町教育(きょういく)委員会(いいんかい)を訪(たず)ね、昨年度(さくねんど)の活動(かつどう)を報告(ほうこく)。石橋(いしばし)勝(まさる)教育長(きょういくちょう)に本年度(ほんねんど)も継続(けいぞく)して取(と)り組(く)む考えを伝(つた)えた。

 アカウミガメの保護(ほご)活動(かつどう)に取(と)り組(く)んでいるのは、洗剤(せんざい)などの大手メーカー・ライオン(本社・東京都(とうきょうと))の大阪(おおさか)工場(堺市(さかいし)、従業員(じゅうぎょういん)約(やく)二百三十人)。同社は各地(かくち)で環境保護(かんきょうほご)活動(かつどう)に取(と)り組(く)んでおり、昨年(さくねん)、同町に対(たい)してもアカウミガメ保護(ほご)への協力(きょうりょく)を申(もう)し出(で)た。ステンレス製(せい)のかご状(じょう)の柵(さく)(縦横高(たてよこたか)さ五十センチ)五十個(こ)と、竹を組んで作った網(あみ)(縦横(じゅうおう)一メートル)百六十一枚(まい)を手作りして提供(ていきょう)し、昨年(さくねん)七月、従業員(じゅうぎょういん)が参加(さんか)して、日本ウミガメ協議会(きょうぎかい)や同町のウミガメ研究班(けんきゅうはん)のメンバーと一緒(いっしょ)に設置(せっち)した。

 十六日は、大阪(おおさか)工場の上谷学(まなぶ)さんと大和(やまと)恒雄(つねお)さんが来町し、石橋(いしばし)教育長(きょういくちょう)に昨年度(さくねんど)の活動(かつどう)内容(ないよう)などを報告(ほうこく)。日本ウミガメ協議会(きょうぎかい)のまとめによると、〇九年度(ねんど)は千里の浜(はま)で百七十二回の産卵(さんらん)があり、三十・八%に当たる五十三巣(す)が食害(しょくがい)に遭(あ)ったが、昨年度(さくねんど)は二百七十二回の産卵(さんらん)のうち、八・五%の二十三巣(す)にとどまったという。

 上谷さんは「どれだけ効果(こうか)があったのかは分からないが、少しは食害(しょくがい)対策(たいさく)に寄与(きよ)できたものと思っている。単年度(たんねんど)で終(お)わってしまっては意味(いみ)がないので、今後もアカウミガメの保護(ほご)活動(かつどう)に協力(きょうりょく)していきたい」と話した。

 同社は、ことしもステンレス製(せい)の防護柵(ぼうごさく)五十個(こ)と竹の網(あみ)約(やく)百枚(まい)を提供(ていきょう)し、七月に従業員(じゅうぎょういん)らが訪(おとず)れて設置(せっち)する。その後も日本ウミガメ協議会(きょうぎかい)の調査(ちょうさ)に協力(きょうりょく)したり、海岸(かいがん)の清掃(せいそう)活動(かつどう)を行ったりするという。

 石橋(いしばし)教育長(きょういくちょう)は「食害(しょくがい)が激減(げきげん)しており、効果(こうか)が大きいと考えている。行政(ぎょうせい)機関(きかん)では対応(たいおう)しきれない部分(ぶぶん)を民間(みんかん)企業(きぎょう)がボランティアで取(と)り組(く)んでくれており、非常(ひじょう)に感謝(かんしゃ)している」と述(の)べた。

 長年、保護(ほご)活動(かつどう)に取(と)り組(く)んでいるウミガメ研究班(けんきゅうはん)の後藤(ごとう)清(きよし)代表(だいひょう)(83)によると、昨(さく)シーズンは五月十二日にアカウミガメの初上陸(はつじょうりく)と初(はつ)産卵(さんらん)があったが、今シーズンはまだ確認(かくにん)されていない。

 後藤(ごとう)代表(だいひょう)も「柵(さく)や網(あみ)を設置(せっち)したことで食害(しょくがい)を半分以下(いか)に抑(おさ)えられていると考えられている。大変(たいへん)ありがたい」と話している。

■JR社員(しゃいん)らが清掃(せいそう) 環境保護(かんきょうほご)の取(と)り組(く)みで

 JR西日本和歌山(わかやま)支社(ししゃ)の社員(しゃいん)らが十四日、みなべ町山内の千里の浜(はま)で、清掃(せいそう)ボランティア活動(かつどう)をした。

 JR沿線(えんせん)の環境保護(かんきょうほご)に貢献(こうけん)しようと、二〇〇八年から毎年取(と)り組(く)んでいる。和歌山(わかやま)支社(ししゃ)によると、紀勢(きせい)線の特急(とっきゅう)電車では乗客(じょうきゃく)に景観(けいかん)を楽しんでもらおうと、千里の浜(はま)付近(ふきん)で速度(そくど)を落(お)として運行(うんこう)したり、アカウミガメの産卵地(さんらんち)であることを紹介(しょうかい)するアナウンスを流(なが)したりしているという。

 この日はJR西日本のほか、西日本鉄道(にしにっぽんてつどう)OB会やグループ会社などの社員(しゃいん)や家族(かぞく)ら計約(やく)三百三十人が参加(さんか)。海岸(かいがん)に漂着(ひょうちゃく)した雑木(ぞうき)や空(あ)き缶(かん)などをごみ袋(ぶくろ)に拾(ひろ)い集(あつ)めた。

 次女(じじょ)の千桃(もも)さん(七)と参加(さんか)した谷口忍(しのぶ)さん(三二)は「子どもたちのためにも、美(うつく)しい浜(はま)を残(のこ)したい」。今井(いまい)克己(かつき)和歌山(わかやま)支社長(ししゃちょう)は「こういった活動(かつどう)を通じて、地域(ちいき)の環境保護(かんきょうほご)に貢献(こうけん)していきたい。二十二日には田辺市(たなべし)で全国(ぜんこく)植樹祭(しょくじゅさい)が開(ひら)かれる。全国(ぜんこく)から訪(おとず)れる人々に和歌山(わかやま)の素晴(すば)らしい自然(しぜん)をご覧(らん)になっていただきたい」と話した。