売春婦の恋(随筆) 昔見たドラマを思い出して涙したので書いてみる。 経済的な理由から来日して売春婦になった女性。 決して美人ではないが、暖かな雰囲気のある彼女だったので、指名する客もついた。 ただし、そこはあくまでも客と売春婦の関係。 客はセックスの道具としてしか彼女を見ないし、それが当たり前。 そんな中にも、彼女を女性として扱う男が現れた。 金持ちの気まぐれではなく、心の渇きを埋めたくてやってきたごく普通の男。 道具から人間扱いにされた彼女は、それまでかたくなに閉じていた「心」を、迂闊にも開いてしまった。 そう、心を..... 彼女は、人間として彼を愛し始めた。 ただ、現実は厳しい。 妻子ある彼が彼女を養うことはできず、したがって、彼女は依然売春婦である。 彼もそれを承知しているが、ただ、彼女に売春婦であることをやめてほしいと言い出せない。 互いに「アイシテル」を言わないまま... アイシテルと言っても、何も変わらないことは互いに承知している。 そして二人の不思議な恋愛関係が続く... そなん中、ついに彼女が意を決して打ち明ける。 「私は体を売って生きている」 「あなたに愛される資格はない」 「でも、私は心は売っていない」 「だから、だから...言わせて、私の心を...」 「あなたを、あなたを愛していると...」 実は、私の記憶はここで終わっている。 なぜなら.... 薄幸の中の美談、真実の愛としての美しいセリフとしてみれば、よくできた本(シナリオ)ではあるが、ありふれたドラマともいえる。 私の予想に反したのは... 「あなたが私の愛を受け止めることができないのはわかっている」 「私があなたをアイシテルと言えば、あなたが遠くに行ってしまうのではないかということもわかっている」 「でも.....私は」 「私は、私の心を押さえられない」 「だから、だからどうか、このままでいて」 「私にできることは何もない」 「あなたが『お金』というのなら、どんどんセックスするよ。いっぱいかせぐよ。」 「『もっとうまくやれ』というなら、一生懸命覚えるよ。腰を振るよ。」 「だから、だからお願い、このままでいて。」 過激で、幼稚で、下品な....こんなセリフであるが... 想像してほしい。 顔をくちゃくちゃにして、頬にはあふれるほどの涙。 両腕を胸の前に、拳を握って揃え。 床にへたりこんだまま、振り絞るように叫ぶ姿を。 嗚咽とともに、胸の奥からこみあげる声。 鼻水は、いつしか鼻提灯となっている。 そこで気が付くのである。 彼女は頼るべき国を捨て、頼る人もない異国に来て、絶対孤独の世界にあって、恋をしてしまった 差し出すものが何ひとつない彼女ができること。 それは、過激で、幼稚で、下品なセックスのことしかなかった。 私はここで、ドラマの続きを見るのをやめた。 ドラマであるがゆえになにがしかの結末はあったのであろう。 ただ、それは私にとっては蛇足でしかないように思えた。 だから、私はこの感動のシーンを記憶するために、テレビを消した。 「私にできることは何もない」 「あなたが『お金』というのなら、どんどんセックスするよ。いっぱいかせぐよ。」 「『もっとうまくやれ』というなら、一生懸命覚えるよ。腰を振るよ。」 「だから、だからお願い、このままでいて。」 過激で、幼稚で、下品な....こんなセリフが好きになった。 あっ、σ(゚∀゚ )オレのことじゃねーよ。<念のため(爆)