俺「え〜と、確かFがこうで…。Cがこうだったな。あとGだかなんだかあったような気がするなあ」
翠星石「さっきから変な音聞こえると思ったらヤスヒロですか。なにしてるです?」
俺「いやーちょっとさあ、中古のギターが安かったんで買ってみたんだよ。買ったら弾いてみたくなるじゃない?」
翠星石「ヤスヒロにギターなんか弾けるですかあ?弾いてる様子が想像出来ないですぅ」
俺「イケてる男は楽器のひとつやふたつ出来るもんさ!
俺は全然駄目だったけど。でも簡単な一曲だけ弾けてたよ」
翠星石「それでさっきからそれの練習してるですか?」
俺「練習以前に指が届かなくてさあ。持ち方すら覚えてないよ。
簡単な曲だったし、弾いてれば思い出すだろと楽譜買わなかったし…。
確か最初は…こうだったかな?♪ ♪。おー合ってる合ってる。
続きは…こんな…。あれ?なんでこんなとこ押さえてんだ?え、え〜と…」
翠星石「なにやらせても駄目なやつですぅ。ちょっと期待して損したです」
金糸雀「音楽ならカナに任せるかしら!」
翠星石「い、いきなりどこから現れるですか!」
俺「え?隠れんぼしてたんじゃないの?
それより、楽器は任せろって、金糸雀ギター弾けるの?」
金糸雀「ギターはちょっと大きくて無理だけど…。
お箸の恩もあるし、ローゼンメイデン一の芸術派、この金糸雀が手ほどきしてあげるかしら!」
俺「ほんとに!?ありがとう!」
翠星石「やめといた方がいいですよ。こいつに何かやらせるとロクなことにならないです」
金糸雀「そ、そんなことないかしら!
さっきヤスヒロが弾いてた曲だってカナ知ってるのかしら!」
俺「え?ほんと?」
金糸雀「カナはなんでも知ってるのかしら!
それじゃ、ヤスヒロがさっき練習してた曲、一度カナが弾いて見せてあげるかしら。
カナはギターじゃなくてバイオリンだけど、カナが弾いたのを聴けばきっとどんな曲だったか思い出せるかしら」
俺「はい、先生!」
金糸雀「昔弾けてたのなら、身に付いていたコツをちょっと思い出せばなんとかなるものかしら。
一度身に付いた物って言うのはそう簡単に忘れたりしないものかしら〜。それじゃ、お庭に行くかしら」
俺「え?庭に?」
金糸雀「カナくらいの奏者になると、お外でないとスケールが足りないのかしら。付いてくるかしら」
俺「はい先生!」
金糸雀「こほん。それじゃ、今から弾いてみせるかしら。…」 ♪ ♪ ♪
翠星石「こ、これはなかなか…」
俺「ほんとに上手だな…。
あ!せ、先生!後ろにつむじ風が!」
翠星石「せ、洗濯物全部巻き込まれたですー!」
金糸雀「カナの演奏で風の妖精さんが踊ってるのかしら!
昔、カナの演奏を聴いた人は、カナの演奏を見てこう呼んだかしら。『嵐を呼ぶ演奏家』と…」
俺「と、通り名があったんですね!かっこいい!」
金糸雀「ヤスヒロだって練習すれば、ギターでつむじ風ぐらい起こせるようになるかも知れないかしら!
けれど、このレベルに達するには血の滲むような努力が必要かしら!挫けず付いてこれるかしら!?」
俺「はい、先生!」
翠星石「馬鹿言ってないでさっさと演奏止めるですー!」
だって。
楽器苦手なもんだから、できる人に憧れちゃうんだよね。
身に付いたら『嵐を呼ぶヤスヒロ』かあ…。ふふ、悪くないなあ。
と思ったけど、翠星石に演奏禁止令出されちゃったよ。シャツからシーツから散乱しちゃってたからね…。
金糸雀音楽教室は1日で卒業になっちゃったけど、昔弾いてたのは思い出せたよ!
志が低いんで思い出せたらちょっと満足しちゃった。いつか上手になりたいね!俺は幸せ者だなあ!\(^o^)/
金糸雀先生が教えてくれたときはこんな感じだったなあ。
優しい先生でした。忘れません。 |